益子陶器市に訪れたもう一つの理由があります。
それは、玉木一将さんの器が見たかったからです。
私たちがスーベニアプロジェクトのリサーチを進めている中で、合羽橋にある「SOI」で玉木さんの作品を手に取り、いつかお会いしたいとずっと想いを寄せていました。
益子陶器市に毎年出展されていたのを知っていたので、
「きっと今年もいらっしゃるだろう!」
っと信じて益子を訪れました。
陶器市は多くの出展者により大変な賑わいをみせ、若手作家さんも数多く出品されています。
その中で、隈なく全ブースをのぞき込み、
「これは違うな、これは、う~ん…。」などとひたすら歩き回ること3時間、
やっと見つけました。
喧騒からずっと外れたブースで、ずっと静かに待っていてくれた器は、
とても美しく、そして滑らかで、思わず手に取ってしまいました。
その場には、誰もいなかったのですが、
「きっと、これが玉木さんの作品に違いない!」
と確信しました。
10分くらいが経過した頃でしょうか、
すると、向こうの方から一人近寄ってきて、
「失礼ですが、玉木さんですか?」と訊くと、
「はい。?」
っという感じで会話が始まったのが、玉木一将さんとの出逢いです。
「玉木さんに会いたくて、益子陶器市に来ました」
と伝えると、
「僕にですか?」
と、照れながら首をかしげる玉木さん。
色々と話してみると、
作品作りにあまりこだわりはないそうです。
生まれは千葉県でありながら、
岐阜で工芸を学び、瀬戸の手法も一部のエッセンスとして加えながら、
茨城県常陸大宮市にて築窯、独立し、
近隣の笠間焼でもなく、お隣の益子焼でもなく、
「自分が美しいと思うものを、作っているんです。」
と、自然と口にされていたのがとても印象に残りました。
物腰柔らかく、見るからに優しそうな玉木さん、
作品もそのココロが映し出されたような、シンプルであり、
透明感のある優しいシルエットが特長ではありますが、
ひとつひとつにどこかしら凛としたこだわりが感じられ、
見れば見るほど、手に取れば手に取るほど、魅力が伝わってきます。
今後、改めて窯にお伺いする約束をしました。
きっと、ぼんわかとした素敵な空間なのではないでしょうか。
Yoshiharu KOIKEDA
▶ ART DIRECTOR / DESIGNER
1978年生まれ、桶川育ち。文化服装学院流通専攻課程スタイリスト科卒。バイクで日本一周を敢行。2003〜2008年の間、イギリスに留学。LSC、Central Saint Martins College of Art & DesignでGraphic and Industrial Designを専攻。2008年に帰国後、シミコムデザインを設立。2011年にスーベニア・プロジェクトを始動。
Twitter:@shimicomdesign